少しづつ変化しつつある楽器事情~個人売買での購入ポイント
ブログも3回目になりました。最初飛ばしすぎると後で苦しむので抑えめで、メインはInstagramとfackbookとTwitterで行きたいと思います(笑)。さて、27年も楽器業界にいると、良い時代も悪い時代もあるもので、音楽業界とリンクしている我々の業界も非常に厳しい状況ではあります。弊社も一時期は新品商品を開発したり輸入品を卸したりしていた時期も少なからずありましたが、今はパーツ卸し/販売以外はリペアーを中心に成り立っている状況です。紙媒体が減り海外も日本も国境無く情報ソースがオープンになった今は中間商売が成り立たないということもあると思います。
これは弊社にとって決して悪いことではありません。弊社にとってはというか、僕にとっては自分が今何をやっているかが重要だから、今はリペアーを頑張る!そして自分と従業員がほそぼそ暮らしていければそれが良いと思っています。

さて前置きが長くなりましたが、皆さんは楽器をどうやって買っているのか。大手リサイクルショップは勿論、ヤフオク!や個人売買、海外オークションで購入されるケースも多くなってきていると思います。そして勿論整備のされていないギターですから我々に需要が多くなってきているのも事実です。
届いてくるまでどういう状況かわからない・・・状態が悪かったらどうしようなどプロに聞きたいことも多いと思います。そこで実際どういうことに気をつけて買えば良いのか、買ったギターに不良が有った場合の修理などということをやっていきたいと思います。
電気的に音が出ない、出力が弱いということはやばい?
電気的に音が出ないということは実はそんなに深刻な内容ではありません。全く音が出ない場合大抵は何処かで接触不良を起こしているだけで安価な電子部品で修理できます。ブーとかなり大きい音がしたらアースが外れている、比較的高周波でザーとした小さめの音であればホット側の結線不良です。具体的にはジャック>スイッチ>ポットの順番で交換比率が高いです。
幾つかピックアップが搭載されている場合一個だけ出力が出ない場合は大抵スイッチの接点不良ですが、出力が弱いと言う場合。聞こえ方に個人差、状況によって異なりますがパワー的に3割ぐらいのパワーしか無いと言った場合大抵はピックアップの断線です。市販ピックアップが安い場合それに交換、弊社ではコイルの巻直しの修理で対応しています。
稀にアクティブの場合電気回路が故障している場合がありますが、片面基板で実装パーツの交換が可能な場合は修理/修復が可能です。弊社でもALEMBICやTUNEといったアクティブ回路を修復した実績があります。
また、実際に音が出ない場合、とりあえず接点復活剤をかける人が居るのですが、やたらかければいいということではありません。接点不良が何処で起こっているのかを把握した上で使わなければ全く意味を果たしません。
また、LINE6等のシュミレーター内蔵ギターは内蔵回路がスマートフォン並に複雑化ししているので基盤不良となる場合即メーカー修理となります。弊社としても修理をしたいのは山々ですがメーカーの方針などでパーツを出荷しないメーカーが殆どです。
1954年のテレキャスターピックアップ修理作業風景

ロッドナットが回りきっているともうそのギターは駄目?
エレキギターには弦の張力によってネックが反るのを防止するトラスロッドという鉄心が入っています。トラスロッドは大抵が1本の鉄心が弓ぞって入っておりそれを締めることで逆反り方向へ矯正する物がほとんどです。中には2WAYといってまっすぐ入っている2本のロッドもしくはボックス上のロッドで調整する機構ですが構造説明は割愛します。
ロッドを自分で調整するユーザーも珍しくないと思いますが、ロッドが回りきっているとダメだという人が居ますがはたしてそうでしょうか?
最初に説明すると、実は回りきっているように思えてグリスアップすれば効くようになるということがかなりあります。その場合ナットを外して錆取りから始めます。また、木部の陥没によって(Fender系ベースに多い)ナットが底づきして回らなくなってしまっている場合はナットに専用のスペーサーを入れます。
ここで本筋に戻ります。では、本当に回りきってコレ以上閉まらない状態とは・・・勇気を持って言いますが製造不良が一番多いのです。この場合ロッドは効くには効きますが、思いっきり締めた状況から少し緩めた状況でも効いて欲しい腰折れなどの箇所や反りの一番深い部分には効かないということが挙げられます。もしもそういうことがなくて本当に回りきっているだけであれば、その楽器はそれで成立するといえます。何故かと言うとそれで張力が取れているからです。
あと何でもかんでもアイロンと言う人が居ますが、エレキギターの場合は殆ど効果は持続せず、早ければ1週間でもとに戻ります。アコースティックギターの場合ジョイント部分の指板のズレなどで矯正できることが有り、その場合有効です。
弊社の場合ネック治具を用いてフレットを抜いて指板を矯正(すり合わせ)しフレットを打ち直す方法を取っています。この方法だと後々もとに戻るということはありません。
*文末に参考資料を張りました。昔ElectricGuitar紙での連載です。
ネック折れのギターを買ってしまった
この事例も良く目にします。しっかりと修復されており、なおかつお店が説明をしていれば何も問題ないし、納得のプライスだったら結構オトクなんじゃないでしょうか。
しかし同時に、直し方が悪くて(概ねクランピングや接着剤の使い方に問題ある)パッチを当てた部分から剥離してくるケースも良く目にします。直した箇所に段差がないかをチェックしたほうが良いです。段差が少しでもある場合後々浮いてくる可能性があります。また、パッチの当て方もダボにして埋めているやり方がありますが、あれは古い工法で再度折れた場合致命傷になり修復困難になります。僕も昔はトラスロッドに沿うように2本ダボを入れて居ましたが、今はやっていません。実は弊社でお客さんにもっともお喜びいただいているのがネックの修復です。接着にかなり時間をかけてもとに戻していく方法を取り、施工については企業秘密も有ります。しかし、仕上がりに皆さん驚かれます。
ネック折れの修理例


偽物・本物?
これは非常に深刻な問題です。プリンター技術の進歩で本物と見間違う様な出来のデカールを売っていたり、買取店でも何軒か偽物を買い取ってしまったなどよく目にします。ギターとして真面目に作って居るものもありますが、特に中国製の低レベルなレプリカが有ります。我々であれば真贋は一発でわかります。
ではどうやって防いだら良いのか?見る目がないのであれば正規店で購入される事をお勧めします。また、フェンダーなど製造国がまちまちであったりしますので製造国それぞれの仕様をよく調べること。それから同じような出品が続いているのであれば疑うこと。なお、偽物とわかっていて買う人も居ますが、そういう輩を相手にしないなどしていかないとこういったものは減っていかないと思います。
また、弊社では偽物をよりリアルにしたり等偽物づくりの片棒を担がされないためにも、偽物のギターの修理は一切お断りしております。
販売経路の多様化で実際ギターを買うにしろある程度は自己責任な時代になっていると思います。また、現在のハイエンドギターなどを引き慣れている人はコンディションの良いものに慣れてしまっており、20年前の技術で作ったものではなかなか満足できない時代になっています。
特に多いのがフレットのコンディションにこだわりがあるギタリストが増えていっているような気がします。
中古楽器でもネック治具を用いたフレットすり合わせで、かなりまっすぐになり、指の接地感が増すことから減っていて駄目だと思ったフレットがまだまだ使えるというケースもあります。
以上参考にして頂き楽しいギター購入につながれば幸いです。
参考リンク:
